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第32回 国際忍者学会
三重大学人文学部 教授 山田 雄司
9月14日・15日の両日、長野県上田市で国際忍者学会第3回総会・大会および巡検が開催された。国際忍者学会とは、研究者、忍者関連事業者・自治体、および忍者に関心のある市民など、広く忍者に興味関心を抱く人々が集い、忍者に関する国際的・学際的研究を推進し、情報提供・会員相互の交流・親睦をはかることを目的として2018年に結成された学会で、ハイトピア伊賀にある三重大学国際忍者研究センター内に事務局を設置している。
第1回は2018年2月17日・18日に「忍者の魅力-クロスオーバーする忍者-」というテーマで伊賀市で開催され、第2回は2018年9月8日・9日に「幕末の忍者」というテーマで佐賀県・嬉野市で開催された。
今回は武田氏や真田氏の研究で著名な平山優氏に「戦国時代の忍びの実像」という演題で基調講演をしていただいた後、「真田忍者の諸相」というテーマ発表が2本、自由発表が3本あった。平山氏の講演は、多数の史料に基づき、具体的に忍びがどのような行為を行ったのか明らかにされたもので、伊賀・甲賀とはやや異なった関東の忍びのあり方をうかがうことができて大変興味深かった。その後の研究発表も、自身の体験に基づいたものだったり、長年の研究の成果をまとめたものだったりして、忍者に対する発表者の熱い思いが伝わってきた。
その後に行われた交流会では、信州上田おもてなし武将隊による華麗な演武から始まり、日本各地から来られた方々に自己紹介をしていただき、大変盛りあがった会となった。大会も交流会も私が司会を担当させていただき、大過なく進めることができて安心した。交流会後も三々五々交流が行われ、さまざまな人と関係を構築して情報を取り交わすことも忍術の一つであることを実践していたようである。
翌日は巡検として、地元の真田忍者十遊士の会の方々にコーディネートしていただき、真田氏関係の史跡をバスで廻った。長谷寺(ちょうこくじ)・山家神社(やまがじんじゃ)・信綱寺(しんこうじ)を訪れ、昼食には地元名物の蕎麦をいただいた後、上田城を訪れて真田忍者手裏剣・吹矢修練場で手裏剣打ちをしたり、当日行われていた流鏑馬の見学をしたりして、大変充実した巡検となった。
今回の上田での開催にあたって、上田市の職員の方々をはじめ、さまざまの方々に大変お世話になり、とても実りのある2日間となった。上田市では、NHK大河ドラマ「真田丸」の際に数多くのイベント等を経験していることから、そうしたノウハウが蓄積されていて、観光に対する取り組みは非常に慣れている感じがした。当日は上田城周辺でいくつものイベントが行われていて、家族連れでとても賑わっていた。
来年9月には滋賀県甲賀市で国際忍者学会大会が開催される予定である。甲賀市では2020年に忍者関連施設を新たに作る予定とのことで、近年観光に大変力を入れている。今回は次回の視察を兼ねて、甲賀から多数の会員がバスを借り切って学会に参加した。日本各地で、忍者に関する取り組みが行われている中で、「本物」を持っているところは強みがある。しかし、それをどう活かしていくかはそれぞれの地域住民にかかっていると言えよう。どこでも限られた予算、限られた人員の中、いかにして効果的な取り組みができるか知恵を絞っている。今後の忍者文化のさらなる広がりと深化を願ってやまない。