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メリ樹 高濱みつ子さん 高濱江利さん
伊賀の恵みが詰まった無添加コンフィチュールを手づくり
栽培から加工、販売まで 家族で営む無添加コンフィチュールのお店
三重県伊賀市平田の自然豊かな田園地帯にひっそりと建つ「メリ樹」。ここは、オーナーの高濱さん一家が手づくりしている無添加のコンフィチュールのお店だ。コンフィチュールはフランス語で、英語ではジャムの意だが、同店の商品は糖度をおさえ、素材の味をいかしたフルーティーな味わいに仕上げているので、従来のジャムとは区別し、コンフィチュールとして販売している。 高濱家では分業制をとっていて、材料づくりを行う畑の管理は父の文明さん、コンフィチュールの製造は母のみつ子さん、販売は娘の江利さんが担当している。材料は土づくりからこだわり、無農薬や有機栽培で自家栽培したものを使用。近所の方や知人が栽培したものも使用しているが、どれも安心して食べられるものばかりだ。商品も一般的なジャムによく使われている増粘多糖類やゲル化剤、クエン酸などの添加物を一切使用せずに、無添加にこだわって製造している。 |
「添加物を一切使わないので固まりにくいのが難点で。主の材料に天然のペクチンとして柑橘類や完熟南高梅などをブレンドして使用し、固まりやすくしています。手間はかかりますが、体にやさしいものが一番だと思って、心を込めてつくっています」とみつ子さん。そんな商品は添加物のアレルギーを持つ方や妊婦さんにも好評で、遠くは関東から注文が入ることも多い。 |
家族への愛情から生まれた無添加コンフィチュールが生きがいに
熊本県出身で、大阪で看護師をしていたみつ子さん。病気の治療のために入院した文明さんと知り合い結婚。みつ子さんは文明さんの体を気遣い、体によい食事づくりを心がけてきた。3人の子どもたちにも体にやさしいものをという思いから、手づくりのお菓子やジャムをつくっていた。その中の一つが商品として店頭に並ぶキャラメルだ。「母は色セロハンでキャラメルをくるんでくれて。キラキラして可愛かったですね。大好きな母の味を今は私が引継ぎつくっています」と江利さんは話す。 仕事の傍ら、大阪から伊賀の畑に通っては、夫婦で週末農園を楽しんでいた高濱さん。リタイアを機に、娘の江利さんとともに伊賀に移住してきたのは、10年前。移住後は畑の数を増やし、庭にも様々な種類の果樹や花を植えた。収穫量も増え、いつしかみつ子さんは、家族のために自家栽培の材料を使った体にやさしいコンフィチュールづくりに励むようになる。その味は周囲から評判になり、家族のすすめもあり、2014年6月に店舗をオープンした。 数十種類あるコンフィチュールは、どれも旬の食材を使うため、季節限定の少量生産のものが多い。ガーデン・ハックルベリーや木いちご、マルベリー、パッションフルーツ、マーマレード、安納芋といった甘いコンフィチュールから、糀に生姜やゆず、ミョウガ、ふきのとう、実山椒などを合わせそれぞれ熟成させた、ご飯に合う「おかずジャム」まで、多種にわたる。6月からは、ずんだのような味わいのエンドウ豆やスモモ、ジューンベリーなどが登場する。 |
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オープンして2年後の2016年には、ガーデン・ハックルベリーと大豆黒糖のコンフィチュールが、2018年にはおかずジャムが伊賀ブランドIGAMONOの認定を受けた。また、「ダルメイン世界マーマレードアワード&フェスティバル日本大会 複数かんきつマーマレードの部」では、2019年に甘夏晩柑マーマレードが、2021年に伊予柑とはっさくマーマレードがそれぞれ銀賞を受賞している。
最後にみつ子さんに伊賀での暮らしについて聞くと「最高ですね。70代になった人生の最終章で、好きな花に囲まれながら好きな仕事ができることが幸せです。主人も持病を持ちながらも畑を4つに増やして、いきいきしながら作業しています。おかげ様で遠方の方に商品を送ることも増えました。家族の支えと、地元の方の協力があってこそ、できるものだと思っています。これからも多くの方に喜んでいただける商品をつくり続けたいですね」と笑顔で語ってくれた。 |
取材日:2021年5月